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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

つまりは、道誉が、近江佐々木の宗家という立場から、備前佐々木党の諸家へ、利をもって、なにかの指令を下して来たものにちがいない。

たちどころに、備前佐々木党は、浦々に兵船をそろえ、陸の要路にも、いつでも討って出られる戦備をととのえ、

「もし、今木の児島や、大安寺の松田勢が、輦輿のお道すじへ向って、その奪取を計るなら――」

とここ二、三日、鳴りをひそめている態である。

で当然、こなたが先帝奪回に逸ッて、そのお道すじの播州境へと、兵をくり出せば、彼らはすぐさま、二つの留守城を急襲して出る。

さらにはまた、兵船をこぞッて、海づたいに船坂附近へ上陸し、輦輿を渡さじとする幕府方の兵に呼応して、味方を孤立におちいらせようとして来ることは、火を見るよりも明らかなこと。――ほぼ、飽浦を中心とする敵の構えはそのようでござりました、と細作の男は一気に述べ終った。

「ご苦労だった。退がっていい」

そのあと。

高徳と五郎とは、睨め合うように、どっちも黙りこくッていた。

容易でない。

どう考えても、事態は大きく狂ッたと観るしかない。

「どうする。権殿」

「どうもこうもおざらん。大覚ノ宮も父重明も、はや大安寺の居城をすでに出ていよう」