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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

「何者か」

わけを知らぬ笠置、赤坂の残党たちは初め大いに怪しんだが、それはみな児島高徳の親族、家の子たちとわかった。――豊田の地は、高徳にとって、祖先伝来の古郷土なのだった。

この熊山党をも入れて、およそ二百余騎となった一陣は、夜明けがた、和気郡片上の入り海のほとりで朝の兵糧を解きあった。目的の船坂峠は、騎馬ならあと半日の彼方にあった。

船坂峠は大昔のいわゆる“和気ノ関”である。

播州赤穂郡から備前三石に入る国境であり山陽道一の険路でもあるので、ここでは源平争覇の時代から天下異変というとすぐ武族の充血や築塁が見られ、とかく戦場にされやすい宿命の土だった。

「おそらく帝の輦輿は、今日か明朝と思われるが、こなたは小勢、平地では勝目もない」

高徳は言った。

片上の磯では、兵糧や馬の飼いも匆々に、またすぐ先へ急いだのだった。

かくて、麓の三石村へついたのは、巳ノ下刻(午前十一時)ごろ。

そこには先の日、加古川ノ宿で別れた権ノ五郎の家来十数名が先着していて、軍馬の埃りを遠くに望むと、

「や。来られた」

と、村口へ出て、みな首を長くしていた。

ここで一ト息入れながら、五郎は、待ち合わせていたその者たちへすぐ訊ねた。