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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
とのことだった。
自分は気が立っている。そのせいとしてはいたが、でも五郎には高徳のそんな神経が「ても、悠長な」と舌打ちされた。で、べつな所に、大覚ノ宮をたずねてなお今日の合戦の手筈など、打ち合せていた。
兵糧もまた、今朝は午ちかくになって使った。頂上のここで炊煙を揚げては、つい二里彼方の敵の物見に発見される惧れがある。そのため麓の三石で炊がせた物を持ち運ばせて食べるという入念ぶりで、今日も鳴りをひそめていたからだった。
が、ついに。――陽は午後に入りかけたのに、今日もなお、輦輿の人馬が有年の山寺を出たという飛報はここへ来なかった。五郎はようやく、焦心り疲れと、疑惑を抱いて、
「はて。おかしい?」
自身時々、高い所に立って鯰峠から有年の方ばかりを眺めていた。
すると未の頃(午後二時)である。さきの日、加古川の宿に残しておいた細作の一人が、まったく方角ちがいな美作の佐用方面からここへたどりついて来た。彼はここの埋伏の陣を見るなり、こう叫んだ。
「とんでもない! こんな所へ幾日陣を伏せてお待ちあっても、無駄事です。天皇のおん輿とは道すじ違い、まんまと、敵にたばかられておりまするぞ」