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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
「髪を洗いたい……」
と、口癖に言いあっていたのであった。
また、後醍醐も、
「昨夜は深々と何もかも忘れて眠った。寝酒のせいか」
と、いつになく、み気色もうるわしかった。
「いいえ」
廉子は言った。
「きっと灸治の効でございましょう。灸はきついお嫌いと仰せられますが」
「嫌いだ、灸は熱い」
「でも、お脚のむくみのみか、お背なども骨露わに拝されまする。どうぞお続けくださいませ」
「まるで、そなたはきつい母親のようだの。子をつかまえていう母のようだ」
「ホ、ホ、ホ。お上には私のような者もひとりはなければいけますまい。行くすえ、御開運の日が来ても、もしお上のおからだがお弱かったら何といたしましょう」
「わかった。つづけるよ」
「では、朝の間に」
「もうか」
「朝の灸治は、わけてよく効くと申しますから」
すぐ小さい香筥をとり出した。それにきのうの艾が入っている。有無をいわさず帝に迫って、彼女の白い手はもう御衣のお背を脱がせにかかる。
しきりに、熱……熱……というような帝のおうめきが洩れていた。行宮とは名のみな建物。すぐ障子一重の外は中坪だった。そのあたりで、さっきから人声がしていたのである。