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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
……おん輿の内ゆえ、ふとお気づきにならず過ぎる惧れもありますが、そこは自分がふと知った態にして、叡覧に供えるように計ります。……その間、あなた様は物蔭にいて、よそながら御兄君(帝)の千里のさきをお見送りなされませ。そして以後はめったに、御幽居や都の争乱の渦にもお近づきなされますな。――時来たれば、道誉がきッとよい機に御対面の労も取りますれば」
すでに。
帝駕は行宮を出るばかりな時なので、何を問い返しているいとまもない。宮はとっさに、傍らの桜の大樹の肌を削って、道誉の矢立の筆を借りうけ――天、勾践ヲ――の二行十字の詩句を半ば夢心地で書いたのだった。
「む。よいおん謎、これは武者どもには何の事やら解けますまい」
道誉は去った。しかし彼がそう言ったのをみれば、彼には“読”も“意味”もわかっていたにちがいあるまい。
まもなく、輦輿がさしかかる。
道誉は早くも馬上の人と変って、輦輿の先を打たせて来たが、ここまで来ると、俄に駒を下りていた。同時に、侍者の行房や忠顕らも、みな何事かと、彼が指さす一樹のまえに寄り集まり、小首を傾げ合うのであった。
「なんと読むのか」