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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

――だがこれは、後になってみてのことだが、まことに、めでたからぬ分裂改元の始めとなった。

なにしろ、隠岐の後醍醐も「退位する」とは決して仰せ出てないことである。

で宮方の者は、こんどの改元を無視して、いぜん元の“元弘二年”を通して行ったので、ここに、一土の民に二つの年号があるという畸形な世紀をこの国に以後六十年も見る端緒とはなったのだった。

けれど、時の流れの遠い行先は、誰にも見えない。この四月の新緑が、またたくして紅葉になるまでの、わずか半年先の変化すら予想してみる風はなかった。

ひたすらに、新朝廷を繞る公卿の門は、常春の世を見たように、はしゃいでいた。

「さぞかし、今年は加茂の御幸(五月の祭)も人出を見よう」

「本院(後伏見)、新院(花園)一品ノ宮、女院方まで、みなお揃いでお出ましとか」

家々では、物見車の塗りかえをさせるやら、女たちは女たちで、晴れ衣裳を拡げ出しては、藤、山吹、卯の花、撫子、とりどりに取り散らし、色襲ねの品評めに、今から憂き身を窶し合うなど、およそ持明院派の公卿で笑いの洩れぬ門はなかった。

もし、時の大河の外にいて、大きな俯瞰をする者があるとしたら、そんな婦女子から堂上のすべてをもくるめた人々の浮游をながめて、