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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

「これは、意外な」

「なにが意外だ。藤夜叉にしろ、小右京にしろ、醜女であったら、つまらぬはなし。つまりは美女であればこそ、業が煮えると申すものだ」

「それや、仰っしゃるまでもございませぬが」

「……とすれば、美い女などは、天が下、二人に限ったものではない。またさほど、女ひでりに渇いている道誉でもなかろうが」

「ならば、もう主膳などが、何も申しあげる儀はございません」

「いいか。さっそく、藤夜叉の身は、一色村へ返してやれよ」

「が、その前に、お会いにもなりませぬか」

「そうだな?」考えこんで、

「やはり、いちど、なだめておかねば、まずかろう。こちらの乱暴も悪かったと」

「しかし、高氏の方にも、胸に覚えがありましょう。乱暴は五分と五分です」

「まあよいわ。とにかく、明早朝、従者四、五名付けて、三河まで送ってやれ。……そして、そうだな、夜食の折、山吹ノ亭へでも連れて出ろ」

池の向いに、井出ノ山吹を写した離亭がある。道誉は、そこを茶堂としていた。

ここのところの謹慎中も、彼は蓄えの茶壺など解いて、茶を賞したり、花を挿けたり、書を読み香を焚くなど、酒以外にも、何か独り楽しんでいた。