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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

――さきに正成が捨てた金剛山のふもと下赤坂の城に、北条方の武族、湯浅定仏が入ったので、たちどころに、山上の避難者だった正成の家族らは、危険にさらされて来たのであった。

もういうまでもないが。

二月頃からこの小馬田へ来ている容易ならぬ“滞在客”とは、その正成の家族なのである。つねに良人の居所さえも知れないうえ、幼な子三人を抱え、わずかな家臣らと共に、これへ身を寄せていた久子以下の、亡命の眷属たちであったのだ。

すると、この四月中旬となって。

その者たちの上に或る吉報が、河内から聞えて来た。

それは、正成の弟正季から来た密書のうちに見えた消息だった。

文意は、ざっとこうである。

およろこび下さい。下赤坂の一城は、やっと先頃、われら郷党の手で奪り回しました。

従って、もう金剛のお住居にも、ご不安はございません。

さだめし多聞丸たちの幼い者も帰りたがっておりましょう。

近日、お迎えとして、正季が兄に代って参じますから、諸事、お物語りは、そのせつに。

「爺。……爺はいませんか」

久子は、これを読むと、室に坐っていられなかった。

すぐこのよろこびを、爺の恩智左近へもと、呼んだのだった。