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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

「抜かるな」

と、その夜、赤坂へ向う兵糧運搬の人夫数百人を、途中で不意打ちさせたのだった。

すべてを奪い、即座に、味方の大部分が人夫の姿に化けた。また兵糧俵のうちには、武器を隠し入れて、わざと追われた様を作しながら、わっと、城門内へ逃げこんだものである。

城兵は「すわ」とばかり打って出て来る。正季たちの少数は、これを城外で迎え討つ。

そのすきに、城内では、すでに入り込んでいた人夫姿の味方が、ぞんぶんに暴れ廻り、内外呼応して、難なく、改修されたばかりの赤坂城を手に陥れ、湯浅定仏以下の敵は、いのちからがら和泉の自領へ退散してしまった――というのである。

「ですから、いまは金剛山の砦の工も、半ば出来、ふもとの赤坂城も、お味方の内にあり、河内は旧にまさる鉄壁となりつつあります。お帰りあっても、はや何のご心配はございませぬ」

と、正季の意気は高かった。

正季の迎えの兵に、久子付きの恩智左近以下を加えると、人数は百人からになる。

服部家の朝は大混雑だった。幼い多聞丸や二郎丸なども、

「河内へ帰るの?」

と、わけもなくただ、はしゃぎ廻った。

疎開先から、もとの家郷へ帰るのだ。