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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

いま、物々しい夜景を目に、初めて、自分のほかにも、ただならぬ世間があるのを知った風だった。

「この様子では?」

あきらめるしかなく、藤夜叉は、また道を後へもどった。

草心尼母子も、不知哉丸も、はや小松谷にいるかどうかは心もとない。――その小松谷の邸は、探題の住居である。戦争とあれば、そこの備えも例外であろうはずがない。

「やはり三河へ……」

と、思い返した意志の足どりというよりは、風にもてあそばれてそこを去って行くような藤夜叉の影だった。――夜をとおして歩いていたにちがいない。一面にはたえず何かにおびやかされて、一歩もとどまっていられないもののようにも見える。

いや事実、彼女は追われていたのである。

彼女自身は、夜が明けたことも、また、街道の人中を歩いていることなども、うつつないかのような姿で、大津越えを東へ、ただせッせと急いでいたが、それいぜんに、蹴上の辺の、とある安旅籠の軒端で、

「やっ?」

一人の男が、じいっと、彼女を見送っていたと思うと、もう一人の連れを、同じ旅籠の内から呼び出して、共にあとを追ッかけ出していたのだった。

そして相坂山をのぼりつめた辺で、