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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

「ここは背も埋む萱原。あれまでお運びたまわれい。おなじことなら、ご最期には、人の聞えにも、おすずやかがよろしゅうおざろう」

と、うながした。

しかし、なかなか起つ容子もない具行だった。今にして、悔やまれもし、恨みはつきない。

すでに、相坂ノ関を越えたとき、死は、覚悟して出たのである。だのに道誉は途中で、自分へ再生の望みあるを、ささやいた。自分は正直に狂喜した。そして彼も一味の士と信じて、何もかも打ち明けた。十年の知盟と交わすように、酒杯をかたむけ合い、たとえ半夜ながら、刎頸の友を契ッた仲ではないか。

その道誉は、どうしたのだ。どこにいるのだ。

姿も見せない。

一たん、覚悟した自分を、死にたくないと、叫ばしておいて、這奴め、どこへかくれたのか。

「……武士ども」

具行は、容易に処理のつかない未練と怒りを、眸にもキラキラさせて。

「道誉はなぜ見えぬか。かりそめにも、源中納言を刑するに、雑武者の手をもってする法やある。――道誉にまいれと申せ」

「まず、お立ちなされ」

「いや、参らぬうちは、動かぬ」

「立たぬとあれば」

「下郎ッ、何とするッ」

「ぜひもおざらん。松の下まで引ッ立てる」