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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

それと、入れちがいに、

「案内はいい」

と、客殿の角から、小侍を追い返す声がしていた。――久子の実兄にあたる松尾刑部季綱だ。

刑部と知ると、爺は、味方をえたように声をかけた。が、刑部は近づくなり言った。

「どう召さる! 正成どの。あなたの態度に業を煮やして、ついに舎弟正季どのは、自分だけの手勢を作って、たった今、龍泉の屋敷を捨て、笠置へ行くと広言して出発したそうですぞ。イヤどうも弱ったものだ!」

「えっ、正季が」

さすが正成も、それには色をなしたのだった。すっと立って、

「ま。こちらへ」

と、書院の内へ、季綱をつれて入った。爺の左近も、季綱のうしろに坐った。

「刑部(季綱)どの。……いつ聞いたのか、そのことは」

「つい今しがた。しかし、笠置へ参陣の用意は、こっそり、おとといあたりからしていたらしい」

「おろかなやつ」

そこに弟をおいて、叱りつける時のような正成だった。

ありありと、その感情が、右の眼にあらわれている。幼少のとき、ソギ竹で突かれた右眼のまぶたが、ぴくぴく痙攣するらしく、しいてそれを閉じている。ために少し顔がゆがむ。

「して、人数は何ほど連れて?」