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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
ここの山里も、もう平和とはいえない。――血気な正季などは、日ごろの同気をかたらって、はや無断、陣立ちしたと知らされて、気が気でなく、呼び返しにやった使いの吉左右を、待たれているところなのだ。
「夫婦でか。……卯木は」
「いいえ、おひとりのようでございまする」
久子は恐々こたえた。
それほど正成の容子は、愉しまないものに見える。
何でであろう。あんなにも妹思いな――そして去年の夏ごろ、その妹のつれあいという者と一しょに、そっとこの水分へ頼ってきた時は――あれほど妹夫婦の身を思いやっていた肉親の兄正成が、どうして今日はと、久子には、良人の眉の彫りがわからない。
で、もいちど。
「のう、わがつま。お通し申してもおよろしいのでございましょ。……多聞、お客さまじゃ、そなたは、こちらへ来やい」
「いや、通すまい。……久子、卯木を内へ上げてはならぬ」
「ま、なぜでございますの」
「そちも聞いているはず。幼少から仕えている西華門院のお内を、情夫ゆえに逃げ退いて、女院のお名にまでご迷惑をかけたみだら女」
「が、そうした事情もご存知のうえ、去年は正季どののおやしきで、あなたさまも夫婦の者へ会うてやり、あの大あらしの夜を領外へと、見送って上げた程ではございませんか」