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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
おからだの逞しい兄宮大塔のよそおいは、見事であった。卯ノ花おどしの鎧に、黄金の大太刀、くわ形のかぶとを負い、その上、美男でもおわしたから、光彩、すでに大将軍らしい威容を燦々と辺りに払って、ご自身確と、将座を自覚しているようだ。
それに比しては、蒲柳な弟宮の宗良は、いかにもいたいたしくみえる。
すずしの御衣の下に、もえぎの腹巻、太刀を横たえ、箙を負うた武者姿など、たとえば紅梅が雪を負ったようで、かの平家の公達一ノ谷の敦盛も、こうであったかと、おもわせる。
とまれ、さっきからその両親王は、堂下の見わたすかぎりな地に、一山の勢揃いがととのうのを待ち澄ましておられる風だった。
やがて、梵鐘の音も止む。
「ほぼ揃うたらしいな」
兄宮のお顔がかすかに横へ。
それに、頷きかえして、弟宮の宗良が、座主として、
「玄尊、大衆へ物申せ」
と、かたわらの者へすぐ命じる。
起ったのは、妙光坊の阿闍梨玄尊だった。「はっ」と答えて、前へすすみ出で、両親王の床几へ、
「ごめん」
と、一礼してのち、堂下の大衆へむかって、吼えるような声で、大弁舌をふるい出した。
非常の鐘の下に、この朝おこなわれた大召集の目的、またここまでのいきさつ、明日への理想などである。