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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

家捜しにかかっていた。

「ない」

「なにもないわ」

「目ぼしい物は何ひとつ」

「まるで空家だ!」

家捜しの物音は、兵たちの張合いなげな口々のうちに終っていた。

「ひきあげよう」

幾通かの、公卿名の書簡ぐらいを獲物として手にかかえた部将が、こう、あごをしゃくッて、兵たちと共に、いちど新田屋敷の門を出たが、

「いや待てよ。いかに当主義貞や家族がおらぬ屋敷にせよ、余りな無人さは、いぶかしい」

彼の再度の命で、兵はまたあとへもどった。そして留守居の老臣、小者、釜屋働きの男女十七、八名の者を残らず、じゅず繋ぎとして引きあげて行った。

この光景も、町の人々の目を刺した。

今暁、足利屋敷から、質子の千寿王が、とつぜん、姿を消したことにまた輪をかけての噂が、

「新田どのも怪しいのか?」

と、波長をひろめた。

その新田義貞は、過ぐる三月下旬ごろ、たった二、三日この鎌倉にいたことがある。

「心なくも病気のため」

という称えで、金剛山の攻囲軍のうちから、暇を願って、郷里へ帰る途中であった。

幕府では、彼が、現地からそのまま帰国の途をとらず、病中なのにわざわざ鎌倉へ立寄って、正しい届け出での手続きに出たことを、