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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

「いや忘れていたが、きょうは五月の節句。端午の客の騒ぎとみえる」

「それは合点だがよ」

と、出雲介は、彼方の大屋根の灯へ、目をすえたまま、

「ここは上野の僻地だが、天下、戦にあえいでいる今だというのに」

「それも、来てみて分った。新田は戦の外に立って費えを避け、このすきに、自領の力を養っているらしい」

「では、足利千寿王の逃亡と義貞とは、関わりがないと、貴公は見るのか」

「まず、ないと見てまちがいあるまい。一方の高氏は遠い上方の戦場へ出ていることだし……。またもし新田に策があるものなら、このさい、笛や太鼓の端午遊びどころではないはずだ」

「それもそうか……」出雲介は肯定して。「では、さっそく評定所のほうへ、それは早打ちしておくとして、明日は足利領へ廻ってみるか」

「それにも及ぶまい」

彦四郎は打消した。

「それよりは、当初の名分どおり、税を徴して立帰ったほうが、公辺へは、よい御首尾ではあるまいか。数日ここに構え込んで」

「なるほど、そのうちもし新田の内輪に異な気振りでもあれば、嗅ぎ出せることにもなるの」

「しっ。……」

ふたりは口をつぐんだ。

たれか見えたのである。