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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

さらにはまた、この夜も甲斐、信濃、そのほか国々から来たり投じる武族がたえない。

「まさに、諸方の徒は、自分が出るのを待っていたのだ」

義貞自身も、はや他日の将軍の栄えを身に擬して半ば鎌倉を呑んでいた。一日ごとに地位の一階段をのぼってゆく自分に思えた。また国々の新参武士らは、すでに彼を昨日の「新田殿」と見ず、もう新たな司権者として、ただの礼を超えたうやうやしさで、あがめたてまつり出すのであった。

わるくない。義貞でなくても、自然、こういう形には乗せられてゆく。わけて義貞は栄えを好む。見得を大事に思う。で、大将の気を映して、軍は破竹の勢いをしめし、次の日もさらに南下をつづけていた。

多摩川が見えだしていた。

義貞は、多摩野の中ほどで、やや駒足を落しながら。

「義助義助。府中へ物見を入れてみたか」

「は。宿場には一人の敵も見えぬそうです」

「河原の方は」

「かなりいたはずの敵勢も、お旗の近づくを知るやいな、みな鳥影のごとく川向うへ逃げ失せましたそうな」

「怯え立ったの」

「北条も平家。ゆらい平家にとって、川は鬼門なのでございましょう。富士川の水鳥以来」

「いかさま。