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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

その花園を兵馬で蹂躪するやつがあれば、高時とて坐視していられぬ。高時と鎌倉とは一つものだ。守って見せる。見せいでか」

そのとき、中門の外でなにか言い争う武者声がしていた。

高時はすぐ気づいて。

「赤橋の声もする。守時が来たのか?」

すると、駈け入って来た一将が、こう訴えた。――かねてから謹慎中の赤橋殿が、無断、禁をやぶってこれへ出仕してまいられ、しかも家の子郎党を連れた御出陣の態である。「いかがしたもので?」と台下の命を仰ぐのだった。

「上げるな」

高時は言って立った。

誰もが、ご赫怒と見て、はっとしたらしいが、高時は階を下りて、大庭に立っていた。そして、

「床几を二つそこへおけ」

と、近習へ命じ、その一つに腰かけてから中門の将へ。

「赤橋をつれて来い」

「お伴いいたしますので」

「なぜ問い返す」

「はっ」

「別れに来たに相違ないのだ。死んだら死んだ先までの憎しみなどは誰へもない。みなもさようには思わぬか」

彼に添って、ぞろぞろ、庭上へ降りてきた金沢ノ大夫以下、同族の武将の群れをふりむいて、そう話しかけなどしている。

――と、もう彼方の内門に赤橋守時の顔が見えた。