輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
いや世へだけでなく、子の高時へも、覚海夫人は、母として、子に詫びていた。――本来は、邪心もなく、生れついたままの性をただ振舞っているだけにすぎない者を――しいて執権の座にあがめて、あらゆる悪政は、みなその暗君のせいかのように、罪を高時ひとりにかぶせている中央や幕府のむごい機構が真に憎かった。――で、どうかして、そのむごい機構の歯車から、わが子を救い出し、そして禅門にでも入れたいというのが彼女の多年な願望だったわけである。
しかし、いまはもうどうしようもない。
このうえは、高時が、よくその天命を自覚して、最期をきれいに。北条九代の終りを、かざらぬまでも、世の物笑いになってくれぬように。――と、産みの子の瘋癲には人いちばい苦労をしてきた母だけに、その祈りも切だったにちがいない。
そしておそらくは、春渓尼からの報告を聞いたのち、彼女自身も、母としてのとるべき道を、心しずかに選ぼうとしているのではなかろうか。
とにかく、春渓尼が、高時の床几の前にいたのもほんの一瞬だった。しょせん、こまかい話などはしていられない。――黒煙はいよいよ濃く、一ノ鳥居の陣地も危うしと聞え、柳営の内も外も、いまはまったく叫喚の坩堝だった。