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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

と、朗々としたおことば。将士へも、賜酒があった。

この晩、たれにもまして、もて囃されたのは、新田の使者の二人だった。野営の庭では供奉の将士から酒攻めの果て、胴上げされんばかりな騒ぎ。これさえホホ笑ましくお聞きあるのか、御簾のあたりのお叱りもない。そして鶏鳴早くも、いよいよ都入りのおしたくに忙しかった。

還幸の途々は、伯耆いらい、ここまでも、たいへんな列伍だった。

頭ノ大夫行房と、勘解由ノ次官光守は、衣冠すがたで、馬上。ほかの公卿官人はみな、騎馬戎衣(軍装)で供奉についた。

出雲の守護、塩冶判官高貞も、国元兵をつれて、前駆の役をつとめている。朝山太郎は五百騎で後陣にしたがい、金持大和守は、錦の旗を捧持し、また、伯耆守名和長年は、

帯剣の役

といって、主上のすぐそばに騎馬を打たせ、

「途上、万一でもあらば」

と、警固のまなこをくばって行く。これは名誉第一の役目らしい。

雨師、道ヲ清メ

風伯、塵ヲ払フ

と、古典の形容も過大ではなかった。

ゆらい沿道の行粧に、威儀や綺羅をたっとぶ風は、古い王朝ほどうすく、時代がさがり、乱に乱をかさね、世間の瞼が、権力のまばゆさを覚えてくるほど、それはものものしい故実を積んで人心収攬の演出を、諸民のなかに凝らしてみせた。