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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

しかしまた何十年ぶりの猛暑だともいわれており、新田義貞の上洛途上では、飲み水や食中たりで、将士のうちで腹をこわした者が多かった。

「やれ着いたか」

「京が見える」

「あれが、加茂川か」

麾下の越後新田党といい、僻地の東国武士などは、その大半以上が、都を見るのも初めてだった。だから逢坂山を経、山科をこえ、やがて洛中の屋根が一ト目に見えだすと、ものめずらしげに、うだるような汗もわすれて、どよめきあった。

すくなくも、義貞の連れてのぼった軍兵は四、五千騎をくだっていまい。

生品明神の社前で旗上げいらいの功臣は、すべて旗もとの左右にひきつれていたのである。そして彼もまた、ほかの例にならって、

主上の御還幸

ならびに

御新政お祝い言上のために。

という触れで、この上京をあえてすすめてきたのであった。また一面、これを新田軍の凱旋としている気負いでもあった。

「木蔭があるな」

義貞は、馬をとめ、

「旅の埃りとこの汗まみれで、都の人中へ入るのもどうか。全軍へ休めとつたえろ」

そして彼も、涼しげな所に床几をおかせ、脇屋義助、船田ノ入道、堀口貞満、篠塚伊賀守などと、入洛の手順について、なにかと諜しあわせていた。