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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
すると、そこには覚一法師が琵琶を抱えて坐っていた。あるじが戻るまでのつなぎに、客の無聊を、慰めよとでも、いいつけられていたものか。
覚一は遠くから、黙って、客のほうへ礼をした。
そして、琵琶の絃をしらべ、やがて平家の“屋島”のくだりを、一曲ひいた。
至芸であった。
曲の秘妙を聞きわける耳はもたない義貞にも何となく心を打たれた。それに、那須ノ余一の扇の的は、武門の間には“祝いの曲”とされている。
彼は、自分の鎌倉の功名と、余一の扇の的とをむすびつけて、祝福感にひたりながら、これが今夜の高氏の馳走であったかと、うなずいていた。
……絃はやみ、覚一は、撥を絃にはさんで、終りの礼を低くすました。そして、しずかに退座しかけると、母の草心尼が、
「覚一、こちらへおじゃ。……世良田の小太郎義貞さまに、ごあいさつ申しあげたがよい」
と、注意した。
「はい」
と、覚一は、細殿のすみに琵琶をおいて、母の声がするそばへ来て坐った。もう二十歳をとうにすぎていたが、なるほど、母のそばにちょこねんと坐ると、どこやらまだ子供子供した盲の小法師そのものだった。
「大きくなったの」
義貞は言って。