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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
「河内? ああ楠木か」
「はい」
「決断所の寄人でもありながら、田舎にのみひき籠って、めったに出仕もせぬと聞く正成が、めずらしくも出てきたとみえるな。通しておけ」
お支度は長かった。宮ご自身、美丈夫ではあり、なかなか身粧いに丹念なうえ、愛妃の心くばりもこまやかなので、やがてやっと客殿へ渡って行かれた。
「はて。……見えんではないか。どこにおる、正成は」
すると、まだほの明るい庭面の階の下で。
「これにおります。いつもごきげんようわたらせられ、大慶に存じあげまする」
「やあ、なんの遠慮。通せと申しつけておいたのに」
「いやたんだ今、六条の宿についたばかりで、このとおり旅のほこりのままでございますゆえ」
「ここ一ト月も田舎だそうだの。きょう出て来たか」
「はい。先年、お旗上げの砦として、ご籠城のみぎり、賊軍のため焼亡した笠置寺へ、さきごろ造営再建のありがたい勅が降されましたので。……それの木材、人工などの用務をおびてのぼりました」
正成は吶々と言いながら、たずさえて来た大ぶりな竹籠の献上物を、宮の坐っている広縁まで捧げてから、また階を下りて、庭面に低くぬかずいた。
「なんだの? これは」