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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

かくまでの御諚では、宮も、父皇のお立場を察して、一応それで満足しなければならなかった。

目ざましい行装だった。

十一月の初めである。沿道の見物人は、その行列へ息をのんで、

「あんな小さい親王さまも、みなと一しょに、みちのく(奥羽)の遠くへ行くのか」

と、信じられぬようなおももちで見送っていた。

勅の旗を奉じて。

この朝。――十七歳の少年北畠顕家は、緋ぶさ飾りの月毛に乗って、御所の郁芳門から奥羽の鎮守に赴任して行った。

その顕家も、まだどこやらあどけない少年将軍の眉だったが、べつな輿へ乗って、軍士の群れに舁かれて行った後醍醐の第八皇子(母は准后廉子)――義良親王は、わずか六歳の幼少だった。

「なにも御存知あるまいに、お祭りにでも行く気で乗って行かしゃるのであろう」

見物の男女は言っていた。

「あの年頃ならよ、おらどもの家のハナタレ坊主を見さッし、遊びざかりで、夜さりは、おふくろの肌を離れもしねえだに」

「それを遠くへ手放しなさる親御も親御だが、ようまた、得心して、行かしゃるものだの」

庶民の親たちには、堂上人種の親子観念そのものは、ふしぎな酷薄さにおもわれて、いかに王政一新のためとはいえ、こうまで“人の情”を超えてしなければならないわけがどこにあるのか了解にくるしんだ。