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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

すると、むくむくと、這い寄ってきた男女のうちの一人が。

「ほんとかね。ほんとにおまえは兼好さんのお弟子で、道誉さまもご存知かい?」

「どうしてそう疑うのさ」

「じつは、わたしたちは田楽者だ。戦もやんだので、近江の衆と一座して都へ稼ぎに出ていたわけよ。するとおとといの辻猿楽で、仲間の役の一人が、楮幣に引ッかけて、楮幣もじりの戯れ舞いを演ッたところ、お客には大受けに受けたものの、そのあとは、たいへんな事になってしまってね」

「捕まったんだろ」

「そうだ。楽屋じゅう十把ひとからげに引ッ立てられ、三人四人と別々な牢へぶちこまれたというわけさ。……ま、長くなるから、それはともかく、道誉さまは伊吹のご城主だし、近江田楽はそのご領下のものなんだよ。中でも花夜叉などはお抱えの一座だが、わしらは諸国を打って廻る素の旅芸人でしかない。だが、それにしろご縁故はあるのだから、もしお耳に入れば、何とか助けて下さらぬかぎりもないと思われる。命松さん、ほんとにおまえ、行ってくれるかね」

「あ、みんながその気になって頼むなら」

「どうして牢を脱けられる?」

「あそこの、高い切窓まで、ここの者がみんなして背なかを組み、それを人梯子にして登れば造作ないだろ」