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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
ために尊氏の早手まわしが効いて、大塔ノ宮が、謀みに謀んだことも断念のほかなくなったものなのである。
だが、尊氏には、この僥倖もすこしあと味がわるかった。――なぜならば彼にはまたもや、道誉という人間がわからなくなり出してきたからだ。
さきに、朝廷の恩賞審議のさいに、たれひとり道誉の戦功など挙げる者もない中で、
「自分の功は割いても、ぜひぜひ、彼へはしかるべき恩賞を」と、主張したのは尊氏だった。またそのご、決断所寄人の一員へ、かれを推挙したのも尊氏である。
道誉もそれは知っていよう。「彼のような男でも、恩義は恩とおぼえているのか?」と、解釈してみたが、しかし“六月七日事件”が不発で終ってしまうと、それからはまた、ふつりと絶えて、たまたま禁裡への参内でふと会っても、どことなくよそよそしい佐々木にすぎない。
この間。――これも坊間の取り沙汰にすぎないが、尊氏は、大塔ノ宮の悪策について、宮の御父後醍醐へ直々せまり、いくつかの実証をならべ、その問責は、強迫的な語気であったとさえいわれている。「かような秘密計画をもって、尊氏をのぞかんとなされるようでは、しょせん、この尊氏は、都にとどまりかねまする。