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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

右馬介は、答えた。

「されば、仰せつけのまま、あとに残って、糺問いたしましたところ、ついに観念したか、曲者もやっと泥を吐きおりました」

「そうか」

と、尊氏は注意ぶかく、楓林のそとを見て。

「――誰も来まいな」

「まいる様子はございません」

「そちも、かけろ」

と、燃えるような紅葉の根もとに尊氏は腰をすえる。

「して、なにか。……曲者はやはりそちが見たとおり、楠木正季の郎党に相違ないのか」

「はい、この右馬介は、いぜん具足師柳斎の名で、河内龍泉の屋敷では、逗留仕事をしていたことさえあるので、這奴も私を見ては、白状せぬわけにはゆきません」

「名は、何という男」

「正季どのの内で、桐山小六と申す郎党でした」

「もう一名、つい、取り逃がしたほうの大法師は」

「小六の白状によれば、殿ノ法印の部下、岡本坊とか申すやつだそうで」

「とまれ、いずれも、大塔ノ宮将軍に属する者だな」

「そういえましょうか」

「そも、たれに頼まれて、この尊氏を闇打ちしようとしたのか。そこはどうだの」

「そればかりは頑として、実を吐きませぬ。のみならず、殿をさして、当今の国賊は尊氏だ、今のうち尊氏の一命をちぢめねば、未来かならず、朝廷の大害になる、尊氏をころして、王政のさまたげをのぞくのは、自分らの信念でやったこと。