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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

二条里内裏は、殿上殿下、ひろい夕闇が、せわしなげに、すべてチロめく灯であった。そして尊氏も供奉の任をすました上はと、退出の機をうかがっていると、ふと、自分を呼びとめる者がある。みると、この三日間、共に行幸の供奉をしていた河内守正成だった。

「ご退出ですか」

正成は、寄って来て、

「もしお急ぎでなくば、折入って、しばし人なき所でお話し申しあげたい儀があるのですが」

と、言いまわしも歯ぎれ悪く、ただ、この人らしい、いんぎんさだった。

「お。何かと思えば……」と、尊氏は気がるに「ちょうど、ご用も終ったところ。どちらへでも」

「かたじけない」

鈴ノ間の西の廊であった。正成が先にあゆみかける。それを尊氏はふと止めて。

「供の輩は疲れています。先に人数を六波羅へ帰してからお目にかかりたい。どこでお待ちくださろうか」

「ならば校書殿の廊ノ間でお待ち申しあげておる。あれには、つねに人もいません」

「では、のちほど」

いちど二人は別れた。

尊氏は、衛府ノ門の外へやって来て、供の面々へ、自分はひとり後から帰る、一同は先にひきあげて、くつろいでいいぞと、いい渡した。

「いや、夜に入っても、お待ちしておりまする」