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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

「師直」

「は」

「容易ならんことをやすやす申すが。よも雑言ではあるまいな」

「なかなか」

と、師直はひれ伏したままで。

「苦肉の計、もし、ほどこすとすれば、それ以外に手はないと考えられます」

「だが、いかに良い策があるにいたせ、阿野廉子の御方とあっては、ちと手に遠い深宮の花だ。どうして、近づくことさえできるだろうか」

「殿のお目は真正面に過ぎまする。後宮も世間のうち。抜け目ない唐者商人などは、准后さまといえば、下々以上にお話もよくわかり、利に賢いお方と狎れて、うまい商売さえしておりますに」

「商売を」

「はい。それも小さい商いではありません。海外との交易です。彼らは准后さまに取入って、官符をいただき、ご朱印船と公称して、あちらの国からさまざまな物を交易して帰り、その一部を、内裏の后町で捌いたあとを、市にも出して、巨利をせしめながら、後宮の女たちからは、大受けに受けておりますので」

「聞いてはいるが、あれも准后のおとりもちか」

「そのほか、准后さまを介してなら、どんなことも叶うと見て、何かと思惑を抱く輩は、手づるを求め、縁故をたどり、いまや三位の廉子さまでなければ、夜も日も明けぬというほどな崇め方なのでして」