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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
「初雪からこれでは、この冬が思いやらるる。まだまだ、世は風雪の時代とみえるな」
天は濃い墨。地は白いほか何もない雪の都ほど、うらわびしい黄昏はない。
わけて、一ト合戦はあるかと恐怖のうちに無事暮れた今日一日のあとだった。およそまだ人の通る影、人の住む家らしい灯影もない。
でも、軌の痕はある。宮の牛車のまえにも誰かは通ったものだろう。やがて二条富小路の禁裡の内へ御車が消え入ったのは、すでに初更(宵)の頃だった。
雪の御所内は諸殿の灯を遠方此方にちりばめて神々しいばかりである。供人の殿ノ法印以下は、衛府を入って、さらに中重ノ門までは参入したが、当然、そこからさきへは行かれなかった。供一同は兵部省側の一堂に止めおかれ、昇殿の口では、はや、宮おひとりの姿だった。
お沓取には大舎人の信連がひかえ、廊の立礼には、葉室ノ前大納言長隆、頭ノ中将宗兼、右中弁正経などのすがたが見えた。宮は、黙然お通りあって、そのまままッすぐに殿上のほうへ歩まれて行く。
皇居も古くからの大内とはちがい、かりの里内裏なので、規模は小さかったが、それでも「仁寿」「承香」「常寧」「校書」「清涼」