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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
わけて、北条時行の軍勢が三道から鎌倉奪回にせまると聞えわたり、ここの警固もおろそかにならざるをえなくなってからは、門も戸も結び丸太や釘付けのままにし放して、番の兵らもみないずこともなく立退いてしまったらしいひそけさだった。
そのしじまの中に。
ま夜中もすぎているのに。
奥のぬりごめの内には、小さい灯が一つ冴えていた。
宮は、この夜、日ごろの白麻の小袖に白のお袴のまま、経机を前に、うとともお眠りになった気しきでない。
虫の知らせ?
そんな漠としたご不安からではなかった。研ぎすました理知のもとに、今明日が、ここの運命を一転する妙機かと、ひそかに、息をつめておられたのである。
目には見えないが、宮の兵略眼をもって観れば、鎌倉三道の攻め口は早や破れつつあるものとわかる。
夕方からは、警固の兵までが、ここを釘付けとして逃げ去ってしまった様子だ。それからみても、はや直義の総敗退か。
「……待てば」
と、時節のほほ笑みがもうそこまで来ているようなお心地であったのだ。
直義に代って、鎌倉へなだれこんで来る次のものは、かつての高時の遺臣らだが、彼らはおそらく、自分を以て、対後醍醐朝廷への、絶好な牽制になるものとし、自分を利用にかかるだろう。