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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

だがふたたび、いやこんどは、もっと間ぢかな所で、廊の板じきがキシみ鳴って、ぬりごめの内へ、のそっと、獣じみた背をかがめた武者の影が這うように躄り進んできたのをごらんあると、さすが、

「……や」

と、一瞬にお顔の血をひき、そしておん眼の力のあらんかぎりをその者へ凝らしながら、

「下郎っ。推参な。この深夜なにしにまいった」

と、怒喝された。

「は」

と淵辺はそのままつい、行儀を作って、辞儀をした。下郎習性と、自分でも歯がゆかったが、どうしようもなく、

「お迎えにまいりました」

と、思わざることを、口のうごくままつい言った。

「なに」

宮は、きびしく。

また寸分のご油断もなかった。

だがふと。これはまことの鎌倉奪回軍の迎えかも知れぬと良い方への解釈にもなる。――古来、宮廷に戦犯なしという不文律があった。近世ではそんな特権は無視され、擾乱のあとでは公卿も斬られ天皇さえ流竄の例を往々にしてみてきたが、よもや死を以て迎えるようなことはあるまい。そんな甘えはこの苛烈きわまる時相のもと武士の嘲笑でしかないとはお覚悟であったにせよ、生れながらに“人の上の人”と思惟づけられてきたお育ちのものは是非もない。