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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
「む。宮とのあいだに、あえて感情のもつれを持つなどは、惧れておる」
「では、恐れなので」
「穿きちがえるな。恐いのとは違う。したが何といっても、後醍醐の御子のうちでも、また宮方軍すべてのうちでも、第一の御方にはちがいあるまい」
「兄者。こうなっては、じつを申しあげますが」
「じつをとは」
「酢屋に押入った先夜の首魁四名の者は、はや六条河原で首斬ってしまいました。いかに吟味しても、一言も吐きませぬゆえ、河原へ曳き出し、つい昨日、処分をすませたばかりなのです」
「なに、すでに斬ってしまっているのか」
これには高氏も、次のことばを失った。事後では今さらどうしようもない。ただかえすがえす、直義の用い所を、ひそかに悔いるのみだった。
殿ノ法印からは、かくとも知らず、しきりに引渡しを迫って来る。しかし高氏は、それを弟のせいにはしなかった。返答は腹をすえたものだった。四名の罪状は明白なので、宮方のご名誉のためにも、これを不問には付しかねる、悪しからず、と断わったのだ。
すると、信貴山からは、ふたたび大塔の御名をかざして「処分はこちらでする。ともあれ四名を引渡せ」と、高圧的に言ってきた。