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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

これと同時に、忍ノ大蔵も一群の忍の手下をつれてこれへ姿をみせた。正成もここに初めて外界の全貌がわかった。敵二万余騎の不可解なあわてぶりも、故なきではない事情をいまは信じていいとして来た。

「よしっ、打って出ろ」

と、正成は、正季以下の者の望みを、そのごにおいて、初めてゆるした。

あらゆる観点から、寄手はもう必然な自解をおこしている支離滅裂と見たからであったが、しかしなお正成は、諸将の逸るにまかせて、ただ盲目的な追撃を誇ってよしとするのではなく、

「傷負は行くな」

と、いましめ、

「いささかでも体に故障ある兵は残れ。とりでにいて、あとを守れ」

と、その号令にもとくに心をつかっていた。

今や全城の士気は沸くばかりであったにせよ、どれもこれも、幽鬼のような籠城窶れだったのはぜひもない。病者怪我人のそれらをはぶくと、城外への急追撃にたえうる将士は、せいぜい六、七百か、あるいはもっと以下とすら想像される。

「つづけ」

ほどなく、正成は、率先して城を出た。

その正成も満足な体ではない。矢傷をこじらせた深股の傷口には蛆さえわいていた。だが彼は、自分を押し進めることが、そのまま千早城の前進であり、敵に多くの死者を捨てさせるより、もっと有利で意味の大きな味方の拡充と見ていたにちがいない。