輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 183,656 字 · 363 頁
ゆき着いた大仁の町も暗かった。寒い風はまだ吹きやまないで、旅館の出迎えの男どもが振り照らす提灯の灯のかげに、乗合馬車の馬のたてがみの顫えて乱れているのが見えた。わたしは風を恐れて自動車に乗った。
修善寺の宿につくと、あくる日はすぐに指月ヶ岡にのぼって、頼家の墓に参詣した。わたしの戯曲「修禅寺物語」は、十年前の秋、この古い墓のまえに額づいた時に私の頭に湧き出した産物である。この墓と会津の白虎隊の墓とは、わたしに取って思い出が多い。その後、私はどう変ったか自分にはよく判らないが、頼家公の墓はよほど変っていた。
その当時の日記によると、丘の裾には鰻屋が一軒あったばかりで、丘の周囲にはほとんど人家がみえなかった。墓は小さい堂のなかに祀られて、堂の軒には笹龍胆の紋を染めた紫の古びた幕が張り渡されていて、その紫の褪めかかった色がいかにも品のよい、しかも寂しい、さながら源氏の若い将軍の運命を象徴するかのように見えたのが、今もありありと私の眼に残っている。ところが、今度かさねて来てみると、堂はいつの間にか取払われてしまって、懐かしい紫の色はもう尋ねるよすがもなかった。