輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 183,656 字 · 363 頁
なんの掩いをも持たない古い墓は、新しい大きい石の柱に囲まれていた。いろいろの新しい建物が丘の中腹までひしひしと押しつめて来て、そのなかには遊芸稽古所などという看板も見えた。
頼家公の墳墓の領域がだんだんに狭まってゆくのは、町がだんだんに繁昌してゆくしるしである。むらさきの古い色を懐かしがる私は、町の運命になんの交渉ももたない、一個の旅人に過ぎない。十年前にくらべると、町はいちじるしく賑やかになった。多くの旅館は新築をしたのもある。建て増しをしたのもある。温泉倶楽部も出来た、劇場も出来た。こうして年毎に発展してゆく此の町のまん中にさまよって、むかしの紫を偲んでいる一個の貧しい旅びとであることを、町の人たちは決して眼にも留めないであろう。わたしは冷たい墓と向い合ってしばらく黙って立っていた。
それでも墓のまえには三束の線香が供えられて、その消えかかった灰が霜柱のあつい土の上に薄白くこぼれていた。日あたりが悪いので、黒い落葉がそこらに凍り着いていた。墓を拝して帰ろうとして不図見かえると、入口の太い柱のそばに一つの箱が立っていた。箱の正面には「将軍源頼家おみくじ」