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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁
プーンと鼻をつく異臭が、さすがの平次を辟易させましたが、それでも割り込むように狭い部屋に入って、傾く夕陽の――丁度窓から射し込むのに透して見ると、八五郎が言ったように、これは間違いもなく半身不随のまま死にかけて居る中気の病人で、嘘も掛け引もないことは一と眼でわかります。
一つ二つ慰めの言葉をかけましたが、病人の釜六には、それも通じない様子です。
平次はいい加減に切上げて、八五郎を誘って、暮の街へ飛出す外はありません。踏み留まって調べるには、これはあまりにも陰惨です。
外へ飛出すと、
「八、近頃六十年配の、左の小鬢に禿のある行き倒れが無かったか、調べてくれ――それがわかったら誰が引取って行ったか嗅ぎ出すんだ、多分乞食だろうと思うが――」
平次はいきなり八五郎に一つの仕事を言いつけるのです。
「乞食ですって、親分?」
「あの病人は呉服屋なんかじゃないよ、立派な物貰いさ、顔は申分なく陽に焦けて居る癖に、歯は真っ白だし、手の甲と同じように手の平まで陽に焦けて居る。人足や百姓のような、激しい仕事をする人間じゃない――多分中気で行倒れになって居る物貰いを拾って来て、釜六に仕立てたんだろう、――非人頭に訊くがいい、うまく行けば一ぺんにわかる筈だ」