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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

「それを承って、ただもうびっくりしております。こんな結構な御主人を、怨むものなどがあってよいものでしょうか」

「怨みがないまでも、主人が生きていては困る者があるだろう」

「さア」

喜助はこの間を持て余した様子でした。

「文三郎に来るように、そう言ってもらいたいが――」

「ヘエ――」

喜助は解放された喜びに、よく肥った身体を転がるように部屋から出て行きました。

続いて入って来た手代の文三郎、この店中では一番立派な男ですが、何に興奮したのか、平次に呼び付けられても、挨拶をするでもなく、死骸の側に無造作に坐って、何やら気になるらしく、後ろの方ばかり振り向いているのです。

「先刻何か捜していたようだが、ありゃ何だい」

平次の間は少し突っ慳貪でした。

「何でもありません」

「主人が死んだという晩、家中の押入を覗くのは穏やかじゃないな」

「…………」

文三郎は黙って唇を噛みます。

「いつから此店に居るんだ」

「一年ほど前からです」

「ここの主人を、赤井市兵衛と知ってか」

「えッ」

文三郎は愕然として眼を瞠りました。平次の言葉が、あまりにも意外だったのです。

「五千両の金は、まだ見付からないのか」