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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁

青空文庫

「それはもう、親類から遊び仲間の家まで、私一人で何遍も何遍も捜しましたが、こちらから捜す時はどこへ隠れているのか、少しも解りません」

お北の言葉には、妙に絡んだところがあります。

「捜さない時は出て来るとでも言うのかい」

「幽霊じゃないかと思いますが」

賢そうなお北も、そっと後ろを振り向きました。真昼の明るい家の中には、もとより何の変ったこともあるわけはありません。

「幽霊?」

「昨夜、お勝手口の暗がりから、――そっと覗いておりました」

「その弟さんが?」

「え」

「おかしな話だな、本物の弟さんじゃないのか」

「いえ、乙松はあんな様子をしているはずはありません。芝居へ出て来る先代萩の千松のように、袂の長い絹物の紋付を着て、頭も顔もお稚児さんのように綺麗になっていましたが、不思議なことに、袴の裾はぼけて、足は見えませんでした」

お北は気象者でも、迷信でこり固まった江戸娘でした。こう言ううちにも、何やら脅かされるように襟をかき合せて、ぞっと肩を竦めます。

「そいつは気の迷いだろう――物は言わなかったかい」

「言いたそうでしたが、何も言わずに見えなくなってしまいました」

「フーム」