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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十五)茶碗割り(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,804 字 · 225 頁

青空文庫

銭形の平次が諦めているほど、その贋金遣いは巧妙を極めました。

そのころ横行した贋金というのは、いわゆる銅脈といった種類で、銅の台に巧みな金鍍金をほどこした細工物で、素人目には真物の小判と鑑別がつかなかったばかりでなく、贋造貨幣犯人の一番むずかしい使用法が巧妙で、江戸中の恐怖になりながらも、容易にその根源を探らせなかったのです。

「あの――」

そんな夢のような事を話しているガラッ八の後ろへ、平次の女房のお静はそっと顔を出しました。相変らず若くて内気で可愛らしい女房ぶりです。

「なんだ」

「お客様ですが――」

「お客様? どなただ」

「それがわかりません。真っ蒼になって顫えているようですが」

「お勝手か」

「え」

平次は黙って立ち上がると、女房を掻きのけるように、お勝手へ顔を出しました。そこには誰もいません。

二月の町は宵ながら冴え返って、戸をあけたままのお勝手の土間に、冷たい月の光が一パイに射している中には、お静の言う真っ蒼になって顫えているお客はおろか、顔馴染の野良犬も来てはいなかったのです。

「八」

「ヘエ」

たったそれだけの号令で、八五郎は疾風のように駆け出しました。