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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十)金色の処女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 137,868 字 · 278 頁
御薬園の門前に迎えたのは、峠宗寿軒、五十がらみの総髪で、元々本草家で武士ではありませんが、役目ですから、麻裃を着けて将軍を高田御殿へ案内します。
奥の一と間、贅を尽した調度の中に納まると、近習達も遠慮をして、将軍を存分にくつろがせなければなりません。高麗縁の青畳の中、脇息に凭れて、眼をやると、鳥の子に百草の譜を書いた唐紙、唐木に百虫の譜を透かし彫にした欄間、玉を刻んだ引手や釘隠しまで、この部屋には何となく、さり気ないうちに漂う一抹の怪奇さがあります。
この時、女の童に襖を引かせて、茶碗を目八分に捧げて入って来たのは、峠宗寿軒の娘お小夜です。曙色に松竹梅を総縫いした小袖、町風に髪を結い下げた風情は、長局風俗に飽き飽きした家光の眼には、どんなに美しいものに映ったでしょう。年の頃は二十二三、少しふけておりますが、その代り町家にも武家にもない、滴るような美しさがあります。
恐れる色もなく、家光の前に進んで、近々と茶碗を進め、二三歩退って、
「お薬湯を召し上がりませ」
わだかまりもなく言って、俯向き加減に莞爾します。こんな無礼な仕打は、日頃の家光には見ようたって見られません。