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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十)金色の処女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十)金色の処女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 137,868 字 · 278 頁

青空文庫

「それは本気か、錦太郎」

平次は眉を開きました。錦太郎の言葉が、この空気の中では、かなり予想外だったのです。

「本当ですとも、親分、六十になる母親の老い先を幸せにするだけなら、三千両で多すぎるくらいで、あとは私が精一杯働きます、なんなら――」

「よしよし、それ以上負けさしちゃ、多賀屋も冥利が悪かろう。お前は思ったより良い男だ、手の込んだ人殺しなんかするより、心を入れ替えて商売でも励むがよかろう。下女のお常の引っ掻きくらいは、俺がなんとかしてやろう、なア、多賀屋」

「ヘエ」

「三千両の利息で、膏薬がどれくらい買えると思う」

平次はそんな無駄を言いながら、もう帰る支度をしておりました。

*

「溜飲が下がったぜ、親分」

暁方近い街、女房のお静が待っている家路を急ぎながら、平次は応えました。

「気の毒なのはお福さ、心柄とは言いながら、あれじゃ江戸中に貰い手もあるまい」

「あっしは親分」

八五郎はニヤリニヤリとほろ苦い笑いを見せます。

「お前も気の毒だよ、たまたま祝言をする事になると思うと、それが身代りだったりして、――でもあんな蓮っ葉娘と祝言しなくてとんだ仕合せよ。