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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十)金色の処女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十)金色の処女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 137,868 字 · 278 頁

青空文庫

八五郎は少しおどけた調子で、家の中を捜し始めました。たった六畳一間にお勝手と店ですから、わけもなく眼が届きます。そのうえ床を剥いだり、天井を覗いたり、清吉まで手伝って半刻(一時間)ばかり掻き廻しましたが、小判はおろか、鐚一枚出て来ません。

「店の品物も見るがいい」

「ガラクタばかりですよ、親分」

「そのガラクタの中に隠してやしないか」

壺も手箱も、瓶も戸棚も、往来に持出されて、天日の下に念入りに調べました。

「ありませんよ、親分」

「その棚の上にあるのは何だい」

「仏様のお厨子じゃありませんか」

店の棚からおろしてきたのは、持ち重りのする手頃なお厨子。

「埃が付いてないネ、八」

「ヘエ――」

蓋を払って見ると、中に納めてあるのは、一尺二三寸の立像が一つ、恐ろしく煤に塗れておりますが、慈眼を垂れて、確と嬰子を抱いた様子は、見馴れた仏様の姿態ではありません。

「変っているね、親分」

「子育て観音だよ」

「ヘエ――」

「南蛮仏とも言うよ。昔切支丹が蔓延っていた時、お上の眼を免れて、これを本尊にしていたんだ。観音様と見せかけて、実は切支丹のサンタ・マリア様だよ」

「すると、屑屋の周助は切支丹だったんだね」