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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(四)城の絵図面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(四)城の絵図面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,179 字 · 280 頁

青空文庫

「やってみましょうか、親分」

「やっても構わねえが、無駄だろうよ。それより、よく出入りを見張っていてくれ」

「ヘエ――」

八五郎は飛んで行きました。せっかく名案を、そのままお蔵にするより、ともかくやってみるつもりでしょう。平次は黙ってそれを見送りました。それよりも、「六十三の今日」が、頭の中にコビリ付いて離れなかったのです。

その晩は何事もなく明けました。

「お早う、親分」

「どうした八、変りはないか――下手人は首尾よくあの術に乗ったかい」

春の朝日と一緒に飛込んだガラッ八は、これもろくに睡なかったらしい、平次の前にくたびれた髷節を掻きました。

「思い付きは申分ないんだが、相手はその上を行く曲者だね。小石を二つ三つ投り込んで――割前をくれ、――とやらかしてみましたか、猫の子も顔を出さねえ」

「そんな事だろうよ、まア諦めが肝腎だ。ところで人の出入りは?」

「出入りは大変でしたよ、お通夜とお悔みで引っ切りなしだ」

「あの家の者で外へ出たのは?」

「これも皆んな出ましたよ。主人は町役人のところへ、和助は早桶屋へ、それから町内を二、三軒、久蔵は昔の仲間浜町の粂吉のところへ、万吉は卜者へ、久三郎は明神下の浪人者井田平十郎のところへ――」