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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《風流太平記(ふうりゅうたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 頁

青空文庫

しかし堀のほうは築地塀があり、外は高い石垣になっているから、そっちへ舟を着け、塀を乗り越えて出れば、さしたる危険なしに脱出できる成算があった。

「雛祭りの宵節句がよろしいかと思ったのですけれど、じつは思いがけないことが起こりましたので、こちらへまいるまえに、舟の用意を命じてまいりました」

「――思いがけない事とは」

徹之助は心が重かった。

彼女の許婚が死んでいる、林市郎兵衛は紀州で死んで、遺骨になって帰っている。それを知らせるのも辛いところへ、自分の妻子を救い出す用談を持って来られたのだから、もともと律義な性格だけ、よけいに、その話を聞くのが辛いのであった。

だが八重の持って来た情報の重要さは、そんな感情をたちまち払拭した。

「昨夜おそく、――」

と八重は語った。

「築地塀のところへまいりまして、乗り越えるために用意してあるものが、みつからずにあるかどうか調べておりました、――これは毎晩欠かさず調べにまいるのですが、そのとき海手のほうで水門のあく音が致しました」

四

「夜半のそんな時刻に」

と八重は続けた。

「それも、ずっとまえからあいたことのない水門があきましたので、なに事かと思って見にまいりました、築地塀に沿って、植込の蔭をまわっていったのですが」