Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
「父の墓」
と、云われても、何っかに未だ父が生きているようで、死んだとも、斬られたとも思えなかった。
汚れた草履を履いて、義観の背後からついて行くと、竹樋から水の落ちている崖の下を降って、少し行ったところに、二尺四方に近い石を置いて、土の高くなったところがあった。義観が、その前に佇むと、綱手は、その土を見た。同時に、涙が湧いて来た。
「極楽往生はしておられる」
義観は、朗かに、自信ありそうに云った。
綱手は、石の前に、跪いて合掌した。合掌すると、ただ、無闇に悲しくなって、涙が、いくらでも出て来た。
(兄もああだし――母がここにいたなら、三人で、ここで死んでもよい、死んだ方がよい。このお坊様に、回向してもらって、この浄らかな山の中で、静かな――ほんとに、静かな――何んという騒々しい、いやな、世の中であろう。こんなところに住んで、何も見ず、何も聞かずにおったなら、何んなに楽しいであろう?)
自分の一家の運命と較べて、綱手は、いろいろのことを思った。
「それだけ泣けばよい。泣くと、胸が納まる。父御は、極楽で、今頃、いい御身分になっておられる。安心するがよい」