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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

蜘蛛の巣網

南玉が、曲り角――道しるべと、石燈籠との立っている角の、低い、小さい、駄菓子を置いた休み茶屋の前で、立止まった。

「何んだ、講釈のびらかえ」

庄吉が、振向くと

「軍談講釈、江戸初下り、扇風舎桃林って――この野郎、女をこしらえて、ずらかったと思ったら、こんなところに、うろついてやあがら」

南玉が、大きな声で、びらを読んで、独り言を云った。茶店の中に、腰かけていた人々が、南玉の顔を見た。南玉は、その内の一人へ

「この講釈のかかっている小屋は、入ってますかい」

と、聞いた。

「よしねえ、見っともねえ」

庄吉が、止めた。

「何うだか――俺、知らんが、茂作、どうだの、流行ってるけえ」

「講釈か」

「うん」

「なかなか、面白えって、評判だよ」

人々の中の二三人が、こういうと、南玉が

「この桃林野郎の、私は、師匠だがね。京の一条、東小路中納言様に招かれて、この弟子をつれて行く途中だが、一つ聞かして上げようかな、今晩」

「何んて、名ですい」

「桃牛舎南玉って、これで、下々の小屋へは、なかなか出んでのう。大名、大旗本の、つれづれを慰めに廻っているが――」

「余り、聞かん名だのう」

「聞かんに蜜柑に、竹に虎。