Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

巷騒

だから、あの毛唐も、鼻が高えや」

「じゃ、荷造りでもして、そろそろ逃げなくちゃ――お梅、お前、浦和の孫太郎のところへ、すぐ逃げて行け。何をされるか知れねえからのう」

「そうだ、ちゃんと、用意しておくのに、越したことはねえ」

長屋の人々が、そうした噂をしている間に、表通りを、荷車に、家財をつんで、通る人があった。

「若旦那」

と、一人が、表から

「黒船が、参りよりまして、江戸中、灰になるかも知れませんぜ」

「黒船が、浦賀へ来たことか」

「へえ」

「あれは、通商を求めに、参ったのじゃ」

「通商って?」

「交易じゃ」

「交易?」

「うむ」

「交易って、何んでござんす」

「交際を致そうと申すのじゃ」

「へえ――物を云いますかい?」

「人間ではないか」

「然し、人を取って食うんでしょう」

「そんなものではない。日本人より、遥かに、利口な奴で、只今申した黒船の如きは、帆前船は、風をたよりで動かすが、あれは、石炭を焚いて、風が無くても、一刻に、十里、二十里と走る」

「本当ですかい」

「本当じゃ」

「落ちついていて、深雪さんみたいな、別嬪は、飛んだことになりますぜ」

小太郎は、返事をしないで、側へ積み上げた着物、陳べた刀の類、調度を、眺めていた。