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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
卍地獄
「出て来ぬかっ」
と、いう叫びを聞いた瞬間
(ここまでは入って来れまい)
と、判断した。そして、振向いて、闇の中の人影をすかすと、侍は田の傍に突っ立ったままでいた。出雲守は
(助かる――これが、天の与えだ)
と、感じた。同時に、大きく、肩で呼吸をした。そして、田の中を、静かに歩いて行った。
卍地獄
「こちら様に――百城様、又は、牧様と、仰せられます方は、おいでなされましょうか」
七瀬は、四ツ本の邸の、内玄関に立った。取次に出た女中が
「貴女様は?」
「七瀬と申しまする。もし、おいででござりましたなら、お手間は、お取らせ致しませぬ、一寸、お目にかかりたい、と、仰しゃって下さりませ」
女中が、立って行って、暫くすると、足早な、男の足音が、響いて来て、襖の内から、百城が、現れた。
「おお」
百城の微笑した顔へ、七瀬も、軽く笑って、お叩頭をしたが、顔色が、少し変った。
「遠慮なく、お上りなされ」
百城は、薩摩飛白の着流しの上に、四ツ本の物らしい、縮緬の羽織を着ていた。七瀬が上ると
「こちらへ」
と、いって、薄暗い廊下から、茶の間へ案内して行った。茶の間には、さっきの取次に出た女中が、座蒲団を用意していたが、挨拶をして、出て行った。