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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

三つの死

「申し上げます、申し上げます」

四五人の浪人が、その大きく呼ぶ声に、気がついて振向いた。

「何うした?」

と、名越左源太が、浪人達の首と肩との間を透して、用人に、顔を見せた。

「哲丸様が、御重体で、早速――」

云い終らぬうちに、左源太が、立上って、前にいる、横にいる浪人達の、肩を押分けながら

「支度せい、支度を――」

と、叫んで、廊下へ、走り出た。そして、急に、振返って、部屋の中の人々へ

「一大事ゆえ、奥へ参る。各々方、よろしく」

一人の浪人が

「一大事とは?」

と、叫んで、片膝を立てた。一人が

「哲丸様が、御病気なのじゃ」

と、云った。左源太は、ざわめく人々を残しておいて

「早く、用意、早くっ」

と、怒鳴った。

「はい、ただ今」

と、女中の、周章てて、答える声がした。書斎へ入った名越は

(ここで、哲丸様を、死なしては――)

と、逆上しそうに、興奮していた。余りに、次々に、不可思議の死を遂げたゆえに

(お悪い)

と、一言聞いただけでも、それは、死と同じ意味にとれたし、又、必ず、死に赴く幼い子供達であった。それが

(御重体)

と、いうのであったから、左源太の頭の中には、死に悩み、死と闘う哲丸の苦しい、歪んだ顔が現れると共に